1977年マクガバン報告では、癌をはじめとする生活習慣病の対策として、肉食を減らし野菜を摂るよう奨励されました。
膨大な調査結果から、野菜に含まれるミネラルを摂取することの重要さが改めて認められたからです。
ここでは、ミネラルの主な働きとミネラルの不足と過剰が引き起こす病気についてお伝えします。
そもそもミネラルって何?
地球上に存在する元素のうち、4つの主要元素(酸素、炭素、水素、窒素)を除いたものをミネラル(無機質)といいます。
私たちの体には、酸素(O)65%、炭素(C)18%、水素(H)10%、窒素(3%)のほかにミネラル(4%)が含まれています。
ミネラルの主な働き
私たちの体は70種類以上のミネラルによって、正常に機能するようコントロールされています。
ミネラルには主に次の働きがあります。
1. 体や組織を構成する成分になる
2. 酵素を構成する成分になり、酵素の活動を促進する
3. ビタミンを構成する成分になり、ビタミンの活動を促進する
4. 筋肉や神経の活動をコントロールする
5. 免疫機能を維持する
6. 性機能を維持する
7.血糖値を下げる など
野菜に含まれるミネラルが激減
ミネラルは体内で作ることができないため、野菜からバランスよく摂ることが必要です。
1977年に発表されたマクガバン報告によると、癌など生活習慣による慢性疾患は現代医学では治療できないとされました。
その対策として、肉食を減らし野菜を摂るように奨励しました。
しかし近年、森林伐採やダム建設によって、土壌に含まれるミネラルが減少しています。
また農薬や化学肥料の使用により、野菜や果物に含まれるミネラルは大きく減少しています。
例えば、必須ミネラルである鉄分は、この50年間で、ニンジンでは10分の1に、りんごではゼロになりました。
「日本食品標準成分表」(文部科学省)より
このように現代では、私たちの体に必要なミネラルは野菜から十分に摂ることができません。
生活習慣が原因である現代病の予防には、不足するミネラルをバランスよく補うことがなにより大切です。
”すべての病気を追求するとミネラル欠乏にたどり着く”
これは化学賞と平和賞で2度のノーベル賞を受賞した、アメリカの生化学者ライナス・ポーリング博士の言葉です。
また栄養学の権威であるアール・ミンデル博士は著書「ビタミンバイブル」のなかで次のように述べています。
ビタミンは重要なものだが、ミネラルなしでは何もできない。
ミネラルこそ、栄養の世界のシンデレラと私は言いたい。
ビタミンはミネラルの助けなしには吸収されることも、その機能を果たすこともできない。
これらの言葉は、私たちの健康にとって、いかにミネラルが大切な働きをしているかを表しています。
ミネラルの欠乏・過剰と病気の関係
ミネラルの欠乏と過剰が原因となる病気には、以下のものがあります。
主要ミネラル(7種類)
1. カルシウム(Ca)
骨や歯の主成分となり、血液、筋肉、神経に関連した働きがあります。
ビタミンDが不足していると十分に吸収できないため常に不足しがちなミネラルです。
不足状態が続くと骨粗しょう症、高血圧、動脈硬化、心不全、うつ病などの原因となります。
2. リン(P)
カルシウム、マグネシウムとともに骨や歯の成分となります。
インスタント食品など加工食品に多く含まれ、過剰摂取になりやすい成分です。
摂り過ぎはカルシウムの吸収を阻害するため、骨や歯が弱くなり、腎臓にも悪影響を及ぼします。
3. カリウム(K)
血液や細胞内液の浸透圧調節やナトリウム吸収の抑制と排出を促す働きがあります。
ナトリウムを摂り過ぎると、ナトリウムと一緒にカリウムも排出されるためカリウム不足となります。
不足すると高血圧、不整脈、食欲不振などの原因となります。
4. 硫黄(S)
アミノ酸、タンパク質を構成する成分であり、骨や皮膚、爪、髪の成分となります。
不足すると皮膚炎、肌荒れ、しみ、脱毛、爪がもろくなるなどの原因となります。
通常の食生活では、不足したり過剰になることはありません。
5. 塩素(Cl)
胃酸の成分になります。
またタンパク質分解酵素を活性化させ、ビタミン吸収を促進します。
塩素の欠乏、過剰は、主に塩分の欠乏、過剰であるといえます。
不足すると食欲不振、消化不良などの原因となります。
摂り過ぎると高血圧、動脈硬化、胃がんなどの原因となります。
6. ナトリウム(Na)
細胞外液に含まれ、体液のアルカリ性、浸透圧を調節する働きがあります。
不足すると倦怠感、食欲不振、嘔吐、めまいなどの原因となります。
通常の食事では不足することはありませんが、摂り過ぎると高血圧や動脈硬化、脳卒中、腎臓病などの原因となります。
7. マグネシウム(Mg)
カルシウムやリンとともに骨の成分となるほか、筋肉や心臓、精神の働きを正常に保つ働きがあります。
不足すると骨粗しょう症、けいれん、しびれ、動悸、不整脈、うつ病などの原因となります。
微量ミネラル(9種類)
1. 鉄(Fe)
血液中の酸素を運ぶヘモグロビンや、活性酸素を除去する酵素であるSODの成分となります。
また体内の酸化還元反応の促進や免疫機能の維持などの働きがあります。
不足しがちなミネラルですが、ビタミンCと一緒に摂ると吸収率が高くなります。
不足するとヘモグロビンが減少するため貧血、動悸、息切れの症状がでます。また免疫力が低下するため病気にかかりやすくなります。
2. 亜鉛(Zn)
酵素の成分になり、体や脳の正常な発育、血糖値の調節、性ホルモンの分泌促進などの働きがあります。
ダイエットなど偏った食生活で不足しやすくなります。
不足すると発育不良、性機能の低下、味覚障害などの原因となります。
過剰になると鉄や銅の吸収を阻害します。
3. 銅(Cu)
鉄の吸収、運搬、代謝に関係し、ヘモグロビンやメラニンの生成、コラーゲンの形成などの働きがあります。
不足すると髪の毛や皮膚の脱色、貧血、骨粗しょう症、不整脈、不妊症、免疫力低下などの原因となります。
4. マンガン(Mn)
酵素の成分になるとともに、酵素を活性化します。
不足すると骨の発育不良、精子欠乏症、不妊症などの原因となります。
5. ヨウ素(I)
甲状腺ホルモンの主成分となります。
不足、過剰ともに甲状腺肥大の原因となります。
6. セレン(Se)
老化防止、抗酸化作用、ガンの抑制、免疫力の維持などの働きがあります。
不足するとガンになりやすくなる、免疫力が低下し病原菌に感染しやすくなります。
7. モリブデン(Mo)
体内の老廃物をつくり、有害物質を分解する酵素の成分となります。
不足すると頭痛、嘔吐、夜盲症などの原因となります。
通常の食生活では不足したり過剰になることはありませんが、過剰になった場合は銅を排出する作用があるため貧血になります。
8. コバルト(Co)
ビタミンB12の成分となります。
不足すると悪性貧血(頭痛、めまい、吐き気、動悸、息切れなどの症状)や食欲不振の原因となります。
9. クロム(Cr)
血糖値の降下、中性脂肪の減少、善玉コレステロールの増加と悪玉コレステロールの減少など代謝に関係する働きがあります。
不足すると糖尿病、高脂血症、高血圧、動脈硬化などの原因となります。
まとめ
1. ミネラルの助けなしには、ビタミンも体内に吸収することができない。
2. ミネラル不足が、癌など生活習慣による慢性疾患の原因。
3. ミネラルとは、地球上に存在する元素のうち、酸素、炭素、水素、窒素を除いたものいう。
4. 70種類以上のミネラルが、私たちの体を正常に機能するようコントロール。
5. 森林伐採やダム建設そして農薬や化学肥料の使用により、野菜に含まれるミネラルが激減。
6. 体に必要なミネラルは、野菜から十分に摂れていないのが現状。
7. ミネラルは、体内では作ることができないため、野菜からバランスよく摂ることが必要。